豊かな麹漬けの世界 野菜も魚も麹でもっと楽しく
<目次>
発酵の魅力に気づくと、いろいろな発酵食品を食べてみたいと思うもの。
ヨーグルトや味噌を積極的に摂ろうと心がけたり、ぬか漬け作りに挑戦してみようかな? など。食べたいものや、やってみたいことが次々に出てきます。
スーパーで発酵食品を買うにしろ、手作りにトライするにしろ、初めは食べやすいものから始めるといいかもしれません。
そこで、日本の食文化の豊かさを感じられ、麹特有の深みを楽しめる“麹漬け”料理に、まずはトライしてみるのはいかがでしょうか。
麹は、食品のうま味を引き出します。味噌や醤油、甘酒などの発酵食品にふくよかな甘味が感じられるのも麹のおかげ。
手作りもできますが、購入も可能なので、気軽に楽しめますよ!
徳川慶喜公も愛した、べったら漬け
最初におすすめしたいのは、江戸時代から伝わる東京の名産品、べったら漬け。徳川家の十五代将軍、徳川慶喜も好んで食べていたと伝えられています。
塩漬けした大根を米麹や砂糖などで甘く本漬けにしたもので、表面がべたべたしています。「衣服にべったりついてしまう」ことが名前の由来なのだとか。
東京の日本橋にある宝田恵比寿神社周辺では、江戸時代から現在まで、年に1回『べったら市』という伝統行事が行われています。起源は江戸中期、10月20日の「えびす講」の前日に、宝田恵比寿神社の門前でべったら漬けが売られたのが始まりといわれています。「えびす講」とは、商家で恵比寿さまを祀り、親族や知人を招いて商売繁盛を願う行事です。
今では「東京の秋の風物詩」と言われるほどの賑わいを見せる『べったら市』には、べったら漬けを売る地元老舗店をはじめ、さまざまな露店が500軒ほど並びます。
宝田恵比寿神社の山車や大人神輿、子ども神輿も練り歩き、それはそれは盛り上がるのだとか。
一度足を運ぶと虜になるようで、発酵日和の編集部員も魅了されているひとりです。
べったら(大根の麹漬け)作りに挑戦!
べったら漬けは自分で作るとなると大変そうですが、ぜひ挑戦したい! という方は、『みんなのきょうの料理』のサイトで料理研究家の大原千鶴さんが紹介しているレシピを参照してみましょう。
『大根のこうじ漬け』と掲載されていますが、べったら漬けと同じものです。
大根のこうじ漬け レシピ 大原 千鶴さん|【みんなのきょうの料理】おいしいレシピや献立を探そう
以下に、大まかな作り方を記します。
(材料)
- 大根1kg(皮をむいた状態で)
- 粗塩約40g(大根の重さの4%)
【麹床】
- 米180ml(1合)
- 米麹 (乾燥タイプ)200g
(作り方)
① 縦長状に切った大根に塩をすり込み、それをポリ袋に入れて漬物器へ。圧力をかけ1~2日置く
② 水が上がってきたら、紙タオルで水気を拭き取る
③ 麹床を作るため、柔らかめに炊いた米の粗熱が取れたら麹を加えて混ぜ、二重にしたジッパー付き保存袋に入れる
④ 約70℃の湯がたっぷり入った鍋に、保存袋入りの麹床を入れ、ふたをして、保温のためバスタオルなどでくるみ3時間ほど置く。甘い香りのおかゆのようになったら、麹床の完成
⑤ 麹床の半量を漬物器に敷き詰め、その上に大根を並べる。その大根を、残り半量の麹床で覆う
⑥ ⑤に圧力をかけて、水が上がってきたら圧力を半分に弱める
⑦ 水がたまってきたら適宜捨てて、涼しい場所に1~2週間ほど置き、発酵を待つ。
1週間後から食べられるので、表面を軽くぬぐい、食べやすい大きさに切り、麹も一緒に盛り付けましょう。
保存期間は、漬物器で軽く圧力をかけた状態で約1か月間。
多めに作って、塩をふった切り身の魚を漬け込んで焼いたり、甘酒として飲むのもおすすめです。
手作り麹漬けライフの入門編 三五八漬け
とはいえ、べったら漬け作りはやはりハードルが高いな……と思う方もいるでしょう。
そういう方のために、とても簡単に作れる三五八漬け(さごはちづけ)をご紹介します!
三五八漬けは、会津や山形、長野の特産品。
食塩と米麹と米(蒸し米)を3対5対8の割合で床を作るので、「三五八」という名前が付いています。
野菜を漬け込むのが定番ですが、魚や肉の下味にも使えます。
甘味たっぷりのべったら漬けとはまったく違い、塩気のある味わいが特徴です。
三五八漬けを作るなら、越前有機味噌の老舗店、マルカワみそのサイトで紹介されている「麹のプロが教える簡単三五八(さごはち)の作り方レシピ」が参考になります。
麹のプロが教える簡単三五八(さごはち)の作り方レシピ | レシピ|越前有機味噌蔵 マルカワみそ
材料も作り方も、いたってシンプルです。
同サイトでは「手作り漬物ライフの入門編」と言っているほど実に簡単で、6時間ほどの漬け時間で完成します。
漬物の初心者の方でも安心して作れると思いますので、ぜひトライしてみてください。
三五八漬けの素があれば、水を混ぜるだけでOK!
三五八漬けは、前述した通り食塩と米麹と米(蒸し米)で作れますが、マルカワみそには『有機三五八漬けの素』という優れた商品があります。
麹と食塩と蒸し米がバランスよく混ぜ合わされているので、それに水を混ぜるだけで出来上がるのです!
マルカワみそによる、三五八漬けレシピは以下の通り。
(材料)
- 『有機三五八漬けの素』 1kg
- 水 200~250cc
(作り方)
① 容器に三五八漬けの素を入れる
② ①に水を入れて混ぜる
たったこれだけの作業で、床は完成!
その後は冷蔵庫で保存します。常温の場所に置いておくと、乳酸発酵して酸っぱくなる場合があるからだとか。
初めのうちは発酵が進んでいないのでゴワゴワした状態で、食塩の味が強くなる傾向にあるので、漬ける時間は短くするのがいいようです。
野菜であれば4~6時間ほどがちょうどいいとのことです。
野菜を麹に漬けて食べる有機麹三五八(さごはち)漬けの素|越前有機味噌蔵 マルカワみそ
冷蔵庫にあるいろいろな食材も三五八漬けにピッタリ
キャベツの芯やニンジンの先の部分、野菜の端材やヘタの部分などの捨ててしまう野菜を2、3回漬けると、野菜の水分で床が慣れて麹の優しい香りが出てきます。
床を使い込むと水分が多くなるので、その場合はお麩や車麩などの乾物を入れたり、表面をスポンジで吸い取ることで水分を除くことができます。
床が減ってきたり、麹の甘味が足りなくなってきたら麹をプラス。
塩気が無くなってきたら塩を適宜足しましょう。そうすることで床が長持ちするのです。
冷蔵庫にある野菜、肉、魚をどんどん漬け込んで、楽しくおいしくいただきましょう。
すぐに出来上がって、いろいろな食材を漬けられる三五八漬けは、手軽に試せそうですね。
かぶら寿司にニシン漬けなど、麹漬け料理はまだまだいっぱい!
このほかにも、麹を使った“麹漬け”料理はあります。
麹と野菜、そして魚を加える郷土料理としては、
- 北陸地方に伝わる、カブとブリの麹漬けの「かぶら寿司」
- 石川県金沢市を中心に愛されている、ダイコンと身欠きニシンを麹で漬け込んだ「大根寿司」
- 北海道の郷土料理の、麹と身欠きニシンと野菜を漬け込む「ニシン漬け」
などが代表的です。
今回はいろいろな麹漬けの料理をご紹介しました。
ぜひお好みのレシピに挑戦して、豊かで深みのある発酵食を堪能してみましょう。
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果・効用を保証するものではありません。