日本人が最も頼りにしてきた発酵調味料
「味噌は医者いらず」と昔から言われ、日本人の食生活と健康に密接にかかわってきました。
栄養源の少なかった時代に、米と味噌は貴重なタンパク源であり、どんなに飢饉にみまわれても農家は「味噌さえあれば」と味噌の仕込みだけは欠かさなかったそうです。
味噌はしょうゆに比べて製法が簡単なため、昔は各家庭で手づくりされ、「家族一斗に客一斗」を目安に年間の味噌が仕込まれていました。1年で1人が約一斗(約18ℓ 10升=1斗)もの味噌を食べていたのですね。
味噌づくりに使う材料はとてもシンプル。蒸した大豆に、麹、塩。これらを混ぜて発酵させ約半年~1年間寝かせるうちに、ゆっくりと甘く醸され、香り豊かな味噌へと熟成されていくのです。
使う麹の種類によって「米味噌」「麦味噌」「豆味噌」に分類され、麹の量や塩分によって味噌の甘辛が決まります。
同じ麹や材料を使っても、土地の風土や微生物の働き方によって、味わいが異なるところが味噌の面白いところ。
全国津々浦々、ご当地味噌の数と同じだけ、味噌の個性があるのです。
味噌の健康パワーが研究結果から明らかに
江戸時代、庶民の日常食について解説された本草書『本朝食鑑』には「大豆の甘、温は気をおだやかにし、腹中をくつろげて血を生かし、百薬の毒を消す。麹の甘、温は胃の中に入って、食及び滞りをなくし、消化をよくし閉塞を防ぐ。元気をつけて、血のめぐりをよくする」という記述があり、古くから経験的に味噌の健康効果が知られていたことがうかがえます。
近年では、科学的に味噌の効用が次々と明らかになっています。
例えば、毎日味噌汁を飲んでいる人は、時々飲む人や飲まない人と比較して、胃がんによる死亡率が低い傾向が認められたという研究(国立がんセンター研究所故・平山雄博士)をはじめ、乳がんの発生率が毎日3倍以上の味噌汁を飲むと軽減される傾向にある(厚生労働省研究班)ことや、味噌が発酵することで老化の抑制される機能が生まれる(東京農業大学・小泉武夫教授)などなど。
味噌はなぜからだにいいの?
味噌には、タンパク質をはじめ、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、食物繊維などたくさんの栄養素が含まれています。
発酵によって大豆の栄養価はさらに高まります。タンパク質が変化して生成されたアミノ酸の中には、生命の維持に必要な必須アミノ酸9種がすべて含まれるようになるのです。
さらに、大豆は栄養豊富な反面、消化吸収が悪いところが難点ですが、味噌になる過程で消化吸収がされやすい成分へと変化を遂げます。 つまり味噌になることで、よりたくさんの大豆の栄養が効果的に体内に取り入れられる仕組みになっているのです。味噌のメカニズムはすごいですね。
その他にも味噌にはたくさんの機能性成分が含まれ、抗酸化作用や、メラニン生成の抑制、免疫強化、コレステロールを下げる働きなど、数々の健康・美容効果が期待できると言われています。
毎朝の味噌汁でからだも心も健やかに
野菜や豆腐などと組み合わせて味噌汁としていただくと、1杯の味噌汁がミネラルや食物繊維も含んだ栄養たっぷりのメニューになります。
唯一心配なのは塩分の摂りすぎについて。塩分が気になる場合は、味噌汁の具材をなす、ニラ、イモ類などのカリウムが豊富な素材にしてナトリウムの体外排出を促したり、濃い目の出汁で味噌の量を減らすなどでカバーしましょう。 減塩タイプの味噌も販売されているので、利用するのもよいでしょう。
あたたかいお味噌汁とご飯の組み合わせは、ほっと気持ちがゆるむ日本人のソウルフード。具材を変えれば、飽きることなくいろいろな味が楽しめます。 1杯でさまざまな栄養が理想的に摂取できる味噌汁には、日本人の知恵が詰まっているのです。
「味噌汁は朝の毒消し」ということわざにならって、毎朝のお味噌汁から健やかな1日をスタートさせてみませんか?
※記載内容は特定の商品または発酵食品についての効果効能を保証するものではありません。