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インタビュー

食養研究家 山田奈美さんインタビュー

母のごはんが子供の体をつくる!栄養を考えた離乳食の考え方

山田奈美(食養研究家)

山田奈美さん

かわいい赤ちゃんの口へ届けてあげる離乳食は、一体どんなものを選ぶのが正解なのでしょうか。発酵食を取り入れて子育てをしている食養研究家の山田奈美さんに、栄養を考えた離乳食について伺いました。

「離乳食に正解はありません! きちんと自分の子と向き合って」

山田奈美さん

「みんな難しく考えてしまいがちなんですが、離乳食はこうするべき!という正解はありません。自分の子の成長具合に合わせて、開始時期や食べさせるものを変えればいいんですよ」

こう話すのは、食養研究家・薬膳料理家として活動する山田奈美さん。山田さんの離乳食教室を訪れる生徒さんは、赤ちゃんにとって理想的な食とは何かと真剣に悩んでいるお母さんがとても多いそうです。いろんな情報が溢れている時代だからこそ、お母さん自身がぶれない姿勢でいるのが大切だと言います。

「なかなか食べない、と心配するお母さんも多いのですが、その子はまだ腸の働きが完成していないのかもしれません。成長とともに食べるようになるから、心配いりませんよ。ここで無理強いすると、食べることが嫌いになってしまうので、少し肩の力を抜いて構えるといいと思います」

何をどういう味付けにすればよいのか、頭を抱える人も少なくないとか。

「子どもは基本的に素朴な味が好きなんです。だから1歳くらいまでは、ほぼ野菜の素材の味だけで対応できます。赤ちゃんはそもそも大人以上に繊細な舌を持っているので、1歳くらいになってから塩や味噌をほんの少し使う程度で大丈夫。がんばってあれこれ味付けをする必要はありません。腸の働きが完成する1歳以降から、徐々にタンパク質を取り入れていきましょう。歯が生え揃う2歳頃には、ほぼ大人と同じものが食べられるようになると考えて良いと思います」

一般的に、味覚は3歳くらいまでに確立すると言われていますが、山田さんいわく、腸内細菌のバランスも3歳までに整うのだとか。そしてそのバランスは、体調などで多少左右することはあれど、一生続くというから驚きです。

「母親の体内では無菌状態の赤ちゃんの腸ですが、生まれた直後から、母親や助産師さん、空気中などからいろいろな菌が取り込まれて増殖していきます。その後、母乳やミルクを飲むことで生後3、4日目からビフィズス菌が優勢になります。それが離乳食を食べ始めると、ビフィズス菌が減って、他の菌類が増え、ほぼ大人と同じ菌のバランスになっていきます。つまり、3歳までに腸内細菌のバランスが決まってくるというわけです。
ですから、離乳食の時期に善玉菌がよく働けるような腸内環境を作っておけば、一生病気や便秘をしにくい身体になれるんです。ここで注意したいのは、悪玉菌が全く無いのも良くないということ。いろんな菌がいたほうがいいということも、覚えておいてくださいね」

発酵食は、赤ちゃんからお年寄りまで負担なく食べられるもの

山田奈美さん手作りの白味噌

さて、先のお話に出てきた「善玉菌がよく働けるような腸内環境」を作るには、一体どんなものが効果的なのでしょうか。それこそが善玉菌が多く含まれている発酵食だと、山田さんは続けます。

「発酵食は、微生物が人間の腸の代わりに、あらかじめ消化しやすい形に変えてくれている食べ物のことをいいます。だから、そのまま食べるよりも胃に優しいんです。赤ちゃんからお年寄りまで負担なくいただけるものなので、これを離乳食に取り入れない手はありません」

離乳食に取り入れる発酵食には、何が向いているのでしょうか。

「手っ取り早いのは、味噌やしょうゆ、塩麹などの調味料ですね。味が濃くなりすぎないように、スープにするのもおすすめです。例えば、塩麹に漬けた白身魚を使うとします。薄味の具材を離乳食にして、そのあとで大人用にしっかり味付けすれば、わざわざ大人用と分けて調理する必要もありませんよ。
納豆もおすすめです。大豆製品は消化が悪いのであまり早いうちから食べさせませんが、納豆は発酵していて柔らかいので、離乳食としても向いています」

発酵食には代謝に関わる酵素がたくさん含まれています。酵素は刺身や果物、生野菜などの生物に含まれていますが、それらを多く食べ過ぎると、冷えを引き起こしたり、果糖の摂りすぎにつながることも。その点、発酵食品なら安心です。

「うちの子は離乳食の頃から積極的に発酵食を取り入れてきたのですが、6歳になる今まで、ほとんど風邪もひきません。虫歯もないし、毎日快便です(笑)。最初に意識して身体のベースを作ってしまえば、後々とても楽ですよ」

少しずつアレンジしていくだけ。簡単シンプル離乳食の作り方 

おちょこを並べた大きめの蒸籠

そこで山田さんに、初期から実践できる簡単な離乳食の作り方を教えていただきました。

「野菜は蒸すと特に味が凝縮されるので、甘みや旨みを強く感じることができます。今回は、かぶを例にして紹介しますね。
作り方は簡単!大きめの蒸籠におちょこを並べ、その中に野菜やお米を入れて蒸すだけ。初期の離乳食には調味料も必要ありません。飽きてきたら、塩や味噌、しょうゆ、お酢を少しずつ足していくといろんな味が作れます」

〈蒸し野菜の離乳食 6ステップ〉

  1. 最初はお米だけを蒸籠で20分蒸したものを与えます。
  2. 2週間程度経ったら、お米の他に野菜を取り入れましょう。皮をむいて大きめに切ったかぶを20分程度おちょこで蒸して、すりこぎですりつぶします。ややとろっとした状態のものを、1〜2週間与えます。かぶだけでなく、季節の野菜をいろいろ蒸してみてください。
  3. 1ヵ月程度経ったら、ペースト状の野菜から、形を残した状態に進めます。かぶであれば、皮をむいて角切りにし、歯茎でつぶれるくらいの状態に20分程度蒸したものを与えます。
  4. 歯が2~3本生えたら、蒸し時間を15分に減らし、噛む練習も兼ねて少し固めに蒸したものを与えます。少しだし汁を加えてもいいですね。
  5. 少し飽きてきたと感じたら、例えばかぶと青菜のように野菜を2種類にしたり、塩や味噌を加えたりして蒸します。固形のまま与えましょう。
  6. 違う野菜を組み合わせたり、スープにしたり、味付けを変えていき、さらにバリエーションを出します。

「ここで注意したいのは、蒸す野菜は小さく切りすぎないこと。蒸している間に繊維が収縮して固くなってしまうので、なるべく大きいまま蒸して、潰したほうがよいでしょう。青菜、切り干し大根、海藻類などは、噛む練習になっておすすめ。乾物は戻さずにそのまま蒸して大丈夫です」

重要なのは、「大人でも食べたくなるような美味しいものを与えること」だと山田さん。発酵調味料をうまく使うことで、素材そのものの味で子どもの舌を楽しませてあげるような、そんな離乳食が作れたらいいですね。

山田奈美(食養研究家)

食養研究家。「食べごと研究所」 主宰。著書に 『つよい体をつくる離乳食と子どもごはん』(主婦と生活社)、『はじめる、続ける。 ぬか漬けの基本』(グラフィック社) などがある。

※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果・効用を保証するものではありません。

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